病名すら知らずに生きた日々 ~発症から診断までの苦悩の297日~

【投稿者:あおひら(仮名)/30代・男性・長野県】

これは僕自身の体験だ。過去一番悲しかったし、悲惨だった。一日一日が重く、苦痛に満ちた日々を過ごしていたが、「病名すら知らずに生きた」あの297日間は、それらをはるかに超える出来事だった。

ある日、突然のことだった。朝起きると、全身に鉛のような重さを感じたんだ。疲労感というには生易しい、例えようのないだるさが体を蝕んでいた。最初の頃は休めば治ると思っていた。でも、まるで底なしの沼のように、日に日に
[member]深く沈んでいくような感覚に襲われた。それまでは普通に日常を送っていたのに、いつしかそれができなくなった。この異常を抱えたまま仕事を続けるのが辛くなり、休職を余儀なくされた。

病院にもいくつか行ってみた。最初は「疲労」だと言われ、栄養剤や休息を勧められた。だけど、一向に症状は改善しない。それどころか、次第に他の症状まで現れ始めたんだ。食事をすると、胃がねじれるような痛みが走る。常に耳鳴りがして、頭の中が叫んでいた。薬はどれも効果がなく、診断は曖昧なものばかりが続いた。何度目かの病院でようやく「難病の可能性」を初めて耳にした。一瞬、希望の光が見えたけれど、それはすぐに別の不安に取って代わられた。「難病」という言葉が僕を突き落とした。

周囲にも理解されなかった。外見にはどこも異常はなく、どこか怠けているようにさえ見えたんだろう。友人との会話も億劫で、頼れる人もいなかった。次第に孤独感が募り、心の中で助けを叫んでも、誰も気づいてくれなかった。家族にすら辛い思いをさせたくないと、本当のことを話せずにいた。

何度も何度も病院に行った。時間が経つごとに、検査結果がただの「異常なし」と記された用紙が増えていく。「検査には問題ありません」という言葉は、僕が抱えている現実とは無縁な気がした。心に大きな穴が開いた状態が続いた。

絶望の中で、たった一つの希望は「診断」という言葉だけだった。一度でいいから、病名をはっきり知りたかった。名前がつけば、今の自分がどんな状態なのか見える気がしたんだ。けれども、その願いはなかなか叶わなかった。

297日目、それは突然の電話で始まった。「来院して結果をお伝えしたい」という医師の声が、今でも耳から離れない。やっと、やっと苦しみをひとつの言葉で表現できると期待しながら病院に向かった。そして告げられた病名は、何の安心も希望ももたらさなかった。「治療は難しく、長い付き合いになるだろう」と淡々と説明される医師の声が、やけに冷たく感じた。

その一瞬、全てが止まった。何をどう感じればいいのか、理解できなかった。ただただ、この297日の果てに待っていたのは、「治療法なし」という現実だけだった。いつ終わるとも知れないこの苦しみに、心も体も支配されていた。

この体験は、僕にとってあまりに深い傷を残している。日々をただ悲しみながら生きる現状に、まだ終わりは見えない。このままではなく、何かが変わることを心のどこかで望みながらも、期待しては傷つく自分がいる。それでも、前に進むしか選択肢はないのが、何よりも悲しい。愚痴をこぼすこともできず、ただ淡々と、続くこの苦しみに耐えているしかないのだ。[/member]

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