「医師も知らなかった、健康診断で見落とされた命の警告」

【投稿者:ユキノリ(仮名)/20代・男性・高知県】

健康診断を受けるとき、僕たちはそれが生命保険のようなものだと信じている。少なくとも、僕はそう信じてきた。しかし、信頼していた健康診断がまさか自分の最愛の人の命に無関心だったなんて夢にも思わなかった。

妻の美咲は、家族思いでいつも献身的に家庭を支えてくれていた。子供たちが学校や部活に行く前には必ず朝ごはんを用意し、僕たち家族が元気で健康であるための拠り所だった。美咲自身も毎年欠かさず健康診断を受け
[member]ていて、それが大きな安心材料だった。

しかし、その安心感は突然打ち砕かれた。昨年末の健康診断結果が届いた日、いつもと何も変わらないと思っていた美咲の健康状態に異変があることに気付くべきだったのかもしれない。報告書には「問題なし」と書かれていたが、美咲は最近疲れやすいと感じていた。それでも、働きすぎだとか、寒くなってきたからとか、自分たちが気にしない理由を勝手に見つけて深く考えなかった。

ある冬の日、美咲は突然倒れて病院に運ばれ、すぐに緊急手術が必要だと言われた。医師は進行したがんであることを伝え、措置が遅れたことに対してもどかしい表情を見せた。僕はその時、何が起きているのか理解できなかった。健康診断は無力だったのか、私たちはなぜもっと早く気づけなかったのか。途方に暮れた。

医師も「健康診断ではわかりにくいケースだった」と言ったが、そんな言葉だけで納得することはできなかった。むしろ、その無力さに対する憤りが込み上げてきた。診断報告だけを信じる日々を悔やんでいた。我々はただ当たり前のように信じていた健康診断に裏切られ、愛する人を失いつつある現実が目の前に迫っていた。

手術を経て放射線治療、化学療法と進む中、美咲の体力と気力は消耗していった。傍にいても何もできない自分の無力さに責め立てられ、それでも僕は彼女がいつものように家に戻ってくることを信じていた。奇跡を心から祈る中で、美咲は病院のベッドで静かに弱っていった。子供たちの元気な声を聞いて微笑む彼女の姿が、病室の薄暗がりでどんどんか細くなるのを見て、涙をこらえることしかできなかった。

健康診断が常に全てを教えてくれるわけじゃない。そう気づかされた今となっては、美咲が生きている間にもっと何かできたのではないかと考える毎日だ。健康診断では見落とされる命の危機。その現実を知ったからこそ、何度も悔やまずにはいられない。誰もが経験者だと感じる検診システムに、そんな風にさえ思ってしまう自分が苦しい。だが、現実は僕たちに笑顔を取り戻させない。

その後の毎日を淡々と過ごしながら、現状を受け入れざるを得ないという現実に向き合っている。患者ともども、僕たちは健康診断の限界と不条理に押しつぶされそうになりながらも、それを諦め受け入れて生きるほかない。この悲しみと向き合い続けなければならない状況は、消え去ることはないんだと学ぶしかない。これが僕たちの現実だ。[/member]

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次