「微笑む仮面の裏で:家族に潜む見えない傷」

【投稿者:ミズキ(仮名)/40代・女性・鹿児島県】

私は、ある日突然、「家族」というものが何であるのか、何であるべきなのかを考えさせられる出来事に直面しました。それは、自分の家族が一見すると完璧に見えるが、その実は脆く、深い溝があることを知ったときのことです。

私の家族は、表面上は本当に理想的でした。父は外で一生懸命働き、母は家庭を支え、私たち子供はそれぞれやりたいことをさせてもらっていました。友達からも「いい家庭だね」と言われ、自分自身もそう思
[member]っていました。しかし、微笑むその裏側には、見えないけれど確かにそこにある傷が潜んでいたのです。

ある日、母が突然入院することになりました。それは、長年のストレスによるものでした。誰に対しても笑顔で接する彼女が、家族の誰にもその辛さを見せず、一人で抱え込んでいたのです。その理由を父に尋ねると、ほとんど話してくれませんでした。父もまた、仕事のストレスで余裕がないと言い訳をするばかり。私は、その時初めて、家族がそれぞれ孤独に戦っていることに気付きました。

その後、母が入院している間は、家の雰囲気が一変しました。父は家事に不慣れで、私と妹はどうやっていいかわからず、ぎこちない状態が続きました。そんな中で、私は母がいかに一家を支えてきたかを痛感しました。そして同時に、その重みを誰にも相談できずにいたことを思うと、涙が溢れて止まりませんでした。

入院先の病室で母に会ったとき、彼女は私たちにいつものように微笑んで、「心配しないでね」と言いました。でも、その顔色は晴れやかではなく、むしろ疲れ果てたように見えました。その目の奥にある深い悲しみを感じ取った私は、何も言えずにただ横に座るだけでした。

私が「どうしたらいいの?」と尋ねると、彼女は「皆に迷惑をかけたくなかった」と。父にも、私たち子供にも重荷になりたくない、それが彼女の心情でした。それを聞いた私は、心の中で何かが崩れるようでした。家族だからこそ支え合って乗り越えていけるものと思っていたのに、実際には、彼女は一人で全てを抱え込んでしまっていたのです。

父もまた、仕事から帰って来ると無言で食事をするようになりました。会話がないことで、家の中はますます沈黙が支配します。私は、どうすればいいのか分からず、ただただ目の前のことをこなしていくことしかできませんでした。それはまるで、家族が少しずつバラバラになっていくのを見ているようでした。

現在もなお、私たち家族は、深いところで繋がり合っているのか、ただ同じ屋根の下にいるだけなのか、考えることがあります。表面上の微笑みの裏には、まだ癒えない傷が横たわっている気がしています。そして、どうすればその傷を癒せるのか、未だに答えは見つかっていません。

誰もが見ている家庭の「幸せ」と、実際の家族の「現実」は、必ずしも一致しないのだと、そこに気づいたときの衝撃と悲しみは、言葉にするのがもどかしいくらいです。なるべくしてこうなったのか、他に道はあったのか。考えれば考えるほど、その答えは見えず、ただただ悲しい現状に立ち尽くしています。[/member]

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