「鏡の向こうに潜む、本当の私」

【投稿者:ひかり(仮名)/30代・男性・長崎県】

私の人生で最も悲惨で苦しかった体験談を話そうと思う。それは数年前のこと。仕事も家庭も順調で、何一つ不満のない生活を送っていると思っていた。だが、ある日突然、その全てが音を立てて崩れ去った。

私は妻と子供たちと一緒に暮らしていたが、その頃、仕事が忙しくて家にいる時間が少なかった。気づかぬうちに、家庭内での疎外感が募り始めていたのかもしれない。ある日、妻が唐突に「別れたい」と告げたのだ。何が起きてい
[member]るのか理解できず、まさに頭が真っ白になった。

理由を問いただしても、妻はただ「もう限界、疲れた」と言うばかりだった。仕事を言い訳に、家庭を後回しにしてきた自分の愚かさをそのとき知った。子供たちは小さく、状況を理解するには早すぎる年齢で、ただ泣くことしかできなかった。

家族が分裂するということが、これほどまでに胸を引き裂くとは思わなかった。片方では、どうしても仕事をやめられず、かといって家庭を顧みることもできず。こんなにも無力で、無様な自分がそこにはいた。

どうすれば良かったのか。何が自分にできることだったのか。反省と後悔の日々だけが続く。ひたすらに絶望感が押し寄せてくる。その中で唯一救いだったのは、子供たちがそんな私に温かな笑顔を見せてくれたこと。しかし、彼らの心には深い傷を残してしまったのだろう。

「自分はつくづく駄目な人間だ」と打ちひしがれている。一度崩れた家庭は、どれだけ努力しても以前のようには戻らない。仕事は相変わらず多忙で、心を許せる同僚など誰も存在しないと感じてしまう。いっそのこと、全てを手放してしまえば楽になれるのかとまで考えた。

街を歩けば幸せそうな家族連れを見かけ、自分の失敗と彼らの笑顔が過剰に心を突き刺す。どうして自分だけがこんなにも不幸なのか、どうしてもっと早く気づいてやれなかったのかという思いが、今も消えることはない。

鏡を見つめるとき、結局そこには何もかもを失った男がいる。魅力も自信もすっかり失われ、ただただ疲れ果てた姿が横たわっているだけに過ぎない。「本当の自分」という理想を、もう見つけることはできないのかもしれない。

こうして日々はただ無情に過ぎ去るが、二度と取り戻せないものを抱え続けながら、一歩一歩、何とか生きていくしかない。結末も見えず、希望もないこの状況の中で、立ち止まらずにいることだけが、今の私に許された唯一の道なのかもしれない。[/member]

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