「心の底に隠された『見せたくない自分』と向き合った日」

【投稿者:風月(仮名)/50代・男性・東京都】

私は、過去に一度だけ、本当に自分がどれほど脆い存在かを思い知らされた経験があります。その時、心の奥底に隠していた「見せたくない自分」と向き合わざるを得なかったのです。思い出しながら、今でも胸が締め付けられるような思いがします。

あれは数年前のことでした。仕事も順調で、家庭も円満、友人関係にも恵まれているように見えていました。しかし、その実、私は心の奥底に抱える不安と葛藤を隠し、周囲には一切見せな
[member]いようにしていたのです。私の内面では、「本当に自分はこれでいいのか?」という疑問が常にぐるぐると渦巻いていました。しかし、人にはそれを悟られまいと必死に明るく振る舞っていました。

その日の朝、何の前触れもなく突然、長年連れ添ってきた愛犬が亡くなりました。私にとって彼は、家族同然の存在でした。最初は呆然としましたが、次第にその不可逆な事実を飲み込むと、心に大きな穴が空いたようでした。これまでの人生で一番悲しい日が編集者的を許可しました。自分でも驚くほどの深い悲しみと孤独感に苛まれました。

しかし、悲しむ間もなく、その日のうちに家族からも予期せぬ知らせが届きました。父親が倒れて、緊急入院したというのです。この立て続けの不幸に、さすがの私も心のバランスが崩れるのを感じました。あまりにも重くのしかかる現実に耐えられず、自分が無理をして取り繕っていた仮面が崩れ落ちる音がしました。

「何もかも失ってしまった……」その言葉が何度も頭の中を駆け巡りました。心が混乱し、誰かに助けを求めたいのに、それすらもできない自分がいました。こんな時は、誰もが「がんばれ」とか「大丈夫だ」と励ます言葉をかけてくれるのが常でしょうが、それが重荷となってより一層、自分を追い詰めるのです。

本当は弱音を吐きたかった。でも、一度崩れてしまったら止められなくなることが恐ろしくて、心の中で叫び続けることしかできませんでした。そうして、何とか崩壊寸前の仮面をもう一度貼り合わせようと一人で必死でした。

この日、心の奥底を覗くことになりました。そこには、「行き過ぎた自己期待と正体不明の不安に打ち勝つために、絶えず自分に鞭を打ち続ける存在」が居座っていたのです。「見せたくない自分」が確かにそこにいました。誰にも言えず、隠し続けた結果がこれだと突きつけられました。

その後も、私は適度に笑い、仕事も続け、社会的には何も問題がないように振る舞い続けました。ただ、どこかで気づいていたのです。それがいかに無意味なことか。仮面を貼り直したところで、心に空いたあの穴が埋まることはなかったのです。失ったものの大きさと、心の中の叫びが消え去ることはありませんでした。

今、そのことを思い出し、自分の中に抑えきれない感情があることを改めて感じます。それをどう処理すればいいのか、未だに分からないままです。私は、自分の心の中の叫びとずっと向き合っていかないといけない。そんな覚悟を、これからも抱え続けるのでしょう。悲しみと共に、ただただ過去の痛みを悔やみながら、今日も自分の内側で叫ぶ声に耳を塞ぎます。[/member]

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