「心を蝕む職場:知らぬ間に壊れていく日々」

【投稿者:ちひろ(仮名)/40代・男性・兵庫県】

ある日のこと、私はいつものように会社へと向かっていた。ストレスは常に感じていたものの、その日は特に体が重く感じられた。仕事に行くという単純な行為さえ耐え難く、足が一歩も前に進まなかった。それでも会社のドアを開けるときに自分をごまかして「今日は大丈夫」と言い聞かせることがいつもの習慣になっていた。

入社したての頃、私の心はまだ元気だった。この職場は最初から厳しいとは思っていたが、なんとかやっていけ
[member]ると思い込んでいた。しかし、時間が経つにつれ少しずつ確実に精神を削られていることに気がついた。上司の厳しい指導や理不尽な叱責、それに加わる客からのクレームの数々。心に蓄積されるストレスは少しずつ限界を超えていった。それは言葉では言い尽くせないほどのプレッシャーで、毎日何かが私を蝕んでいるように感じた。

ある日、会議室に集められ、突然プロジェクトの責任を全て押し付けられたことがある。仲間だと思っていた人たちも、誰一人として私を助けてくれる者はいなかった。それどころか「君が責任を取るべきだ」の一言で背を向けられた。裏切られたと感じたし、その一件で信頼も完全に崩れた。「どうして味方してくれないんだ?」と心の中で叫ぶが、誰も私の心の声には耳を傾けない。ただ孤独と絶望が広がっていくばかりだった。

仕事が終わった後も、何度も「辞めてしまいたい」という思いが頭をよぎった。しかし、家族がいる。責任がある。辞めた後のことを考えると怖くて決断できなかった。結局、次の日も重い体を引きずって職場に向かう。繰り返される無意味な毎日が、精神をさらに蝕む。

同僚たちとの付き合いも避けるようになった。理由は簡単だ。誰も私を本当に理解してくれないからだ。愚痴をこぼすことですら、有限のエネルギーを奪われるように感じ、ただただ口を閉じる。気がつけば、心を開ける相手は誰もいなくなっていた。

一時期はカウンセリングも受けたものの、根本的な解決には至らなかった。ただ「もう頑張らなくていい」と言われたときだけ、少し救われた気持ちになったが、翌日にはまたいつものルーチンが始まり、その言葉の響きも消えてしまった。結局何も変わらず、頼れるものは自分の意志の力のみ。感情も何もかもがいつしか消耗しきってしまっていた。

毎日の中で、自分が壊れていく感覚を止めることは出来なかった。鏡を見るたびに己の姿が恐ろしくて仕方がない。かつては笑っていたはずの自分は、今では顔からすっかりその笑みを失っている。どうしようもない虚無感だけが心を占拠していた。

そして今も、いまだに自分を許すことができない。日々、心のどこかで「もう限界だ」と叫ぶ声を押し黙らせる。明日もまた、同じように起き上がり、同じ道を歩いていくのだろう。しかし、それがただただ悲しい。どん底から這い上がる術も力も無く、取り残された心だけがここにある。誰も助けてくれるはずもなく、助けを求めることももうできない。ただ、抜け出せない現実が私を押し潰すばかりだ。[/member]

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次