【投稿者:空風(そらかぜ)(仮名)/20代・女性・島根県】
私は高校3年生の時、弟を病院のベッドで看取ることになってしまいました。当時は勉強に夢中で、部活や友達との時間に追われ、家族とのコミュニケーションが疎かになっていました。でも、まさかあんな事になるとは夢にも思わなかったのです。
弟は中学2年生で、いつも元気いっぱいで皆を笑顔にしてくれる存在でした。でも今思えば、弟は何かを抱えていたのでしょう。私がそれに気づけなかったことが、今でも胸を締め付けます。
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思い返せば、弟は時折「頭が痛い」と言ったり、やたらと部屋に籠もることが増えたりしていました。それに気付いた時も、私は「あぁ、思春期だからか」なんて軽く受け流してしまいました。そして、それが「小さなSOS」だったんだと、弟が倒れてからようやく理解しました。
あの日、学校から帰宅すると家が騒がしく、不穏な空気が漂っていました。母は泣き叫びながら病院に電話をかけ続け、父も動揺を隠せない様子で家中をやたらと歩き回っていました。そして、リビングの一角には倒れたまま動かない弟の姿…。その時の光景が今でも脳裏から離れません。
慌てて救急車を呼び、病院に着くと、私たちは長い時間待たされました。あの時の待合室の静けさ、時計の音だけがやけに大きく響いていたのをまだ覚えています。そして医師から「もう少し早ければ」という言葉を聞いた瞬間、体の力が完全に抜け落ちました。「もしかすると」という淡い期待は、一気に消え去りました。
弟は重い病にかかっていたのです。それに誰も、家族ですら気付かなかった。もっと体調を気遣っていれば、もっとちゃんと弟と向き合っていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。後悔が雪崩のように襲ってきました。
病室で見る弟はとても静かで、あんなに騒がしかった弟とは別人のようでした。何度も何度も声をかけましたが、反応はなく、冷たい手を握りしめることしかできませんでした。あの小さな体で抱えていた不安や苦しみを、どうにかして分かってあげることができなかった。その現実が耐え難く、涙が止まりませんでした。
弟のベッドの横で、私は今まで忘れていた家族の絆や、彼の無邪気な笑顔を思い出しては、どうしようもない虚無感に追われました。もっと彼のことを理解して、気にかけていれば…。後悔ばかりが頭を巡ります。彼が何を考えていたのか、もう知ることはできません。その哀しみから未だに抜け出すことができず、笑顔で写った彼の写真を見るたびに、胸が張り裂けそうになります。
現実というものは、時に残酷で、あまりにも辛いものです。この先何年経っても、きっとこの痛みも悲しみも忘れることはないでしょう。それでも生きていくしかないんだと思います。私はそれを胸に刻み、彼の分まで精一杯生きようと決心しましたが、心のどこかで後悔と悲しみを抱えたままなのです。[/member]