【投稿者:月影(仮名)/20代・男性・宮城県】
あれはちょうど一年前のことだったと思う。それまでの人生で最も悲惨で、心に深い傷を刻んだ出来事が起きた。妻が突然、難病を発症したのだ。彼女の笑顔は、僕にとって毎日の活力だった。でも、その笑顔がある日を境に失われてしまった。
結婚してからというもの、僕たちは本当に仲が良くて、日常の些細なことでも笑い合えた。それが突然、病という現実に打ちのめされることになるとは思いもしなかった。最初、妻は少し疲れやす
[member]いとか、時々手が痺れるという程度の症状を訴えていた。大したことはないだろうと思い、病院に行くよう勧めはしたものの、僕自身も特に心配はしていなかった。
ところが、診断結果を聞いたとき、頭が真っ白になった。医者が告げた病名は、聞いたこともないような難病で、回復の見込みはほとんどないという。瞬時に、「これからどうすればいいのか?」という絶望が押し寄せてきた。彼女の笑顔を、また見ることができる日は来ないのだろうか、と心が締め付けられる思いだった。
それからの日々は、まさに地獄だったと言っても過言ではない。次第に、妻の症状は悪化し、ベッドから動けなくなる日が増えた。それまで何でもこなしてきた彼女が、目の前で徐々に力を失っていく姿を見るのが、本当に辛かった。それまでの笑顔はどこへ行ってしまったのか、記憶の中の輝かしい日々が、まるで遠い幻のように思えた。
僕はできる限りのことをして、彼女を支えようと必死だった。でも無力感に打ちのめされ、自分の行動が本当に彼女の助けになっているのか分からなくなってしまった。医者も薬も、時としてその無情さを浮き彫りにする。僕が受け入れられない現実は、その客観的な結末を冷たく示していた。
一番辛かったのは、彼女が自分の運命を悟り始めたときだった。この病気を克服することはできない、という事実に彼女自身が気付き始め、笑っているふりをして「大丈夫だよ」と言うことが多くなった。言葉と表情の裏に隠された本当の気持ちを考え始めると、涙が止まらなくなる夜が度々あった。あんなに強がっていた彼女が、どうしようもなく枯渇していくさまを見るたびに、心が張り裂けそうなほどの悲しみに襲われた。
そして、ある朝、目覚めると彼女はベッドの中で静かに息を引き取っていた。最期は苦しまないで逝けたことが唯一の救いだったが、それでも僕にはこの悲惨な現実を受け入れるための準備が全くできていなかった。一緒に過ごした日々、彼女の笑顔、ともに見上げた星空――全てが失われてしまったと感じた瞬間だった。
今はその日から風景も違うものに見える。街を歩けば、ふとした景色や香りに、彼女との思い出が積み重なり、涙がこぼれそうになる。もう二度と彼女の笑顔を見ることはできない。瞳をそっと閉じれば、その笑顔が鮮明に思い浮かぶ一方で、現実が僕の胸を冷やりと貫く。
この経験から僕が得たもの、失ったものの全ては、未だ受け入れられていない部分が多い。ただ、今はただ、彼女の失われた笑顔の大きさを感じ、日常の何でもない瞬間がどれほど貴重であるかということを痛感し続けるばかりだ。この心の旅路は、想像以上に長く、そして、終わることのないものとなったようだ。[/member]