「家族の食卓に潜む静かなる孤独の叫び」

【投稿者:ユキト(仮名)/20代・男性・香川県】

毎日、家に帰るのが億劫だった。どんなに職場で忙しかったとしても、家に着くと感じるのは息苦しさだけだった。電車のなかで想像する夕食の風景に、胸のなかで重たい何かが沈んでいく感じがする。

仕事が終わり、いつもの時間に家に着くと、玄関までわずかの道のりが長く感じられる。家に入ると、まずリビングから静かな食器の音が聞こえてくる。妻と子供たちがいるはずの食卓が見えてくるたびに、心の中で叫びたくなる衝動に駆
[member]られるんだが、いつもそれを押し殺して静かに席に着く。

座ればいつものように、皆は自分の皿と向かい合っている。ただ黙ってフォークや箸を動かしている。妻とは最近ほとんど会話がない。かつては何気ない話をしていたのに、今ではそんな日常会話も失われ、ひたすらに無音の時間が流れるだけだ。

大好きだったはずの家族と同じ空間にいるはずなのに、どこかよそよしい違和感を感じる。子供たちはそれぞれのスマートフォンに夢中で、話しても簡単な返事しかしない。皆そろっているはずなのに、自分だけが一人ステレオで別の番組を見せられているかのような感覚だ。「ねぇ、元気だった?」と声をかける勇気が出ないまま、だましだまし食事を終える。食欲が無くなるわけではない。ただ、食事がどんどん苦しい時間になっていく。

そんな状況に、時折自問自答する。「どうしてこんなになってしまったんだろう」って。思い出すのは、かつての笑顔が溢れる食卓だ。子どもたちがまだ幼かった頃の話や、料理の味加減についてのちょっとした議論。それが今では過去のものになってしまった。もしかして、職場での俺のストレスが伝わってしまったのだろうか、それとも単に家族それぞれが忙しくなり過ぎたのか。理由は分からないが、解決の糸口も見えないまま苦しむ自分がいる。

心の中で、無言の叫びを上げる。「もっと繋がりたい」—ただ単に、違うことを求めるだけじゃなくて、日々の愛を実感したい。無性に家族の表情をもっと見たい、その喜びに触れたいと思うようになる。それをどうにかして伝えられたらと悔やみながらも、その言葉がどうしても出てこない。

誰にも相談できず、話したくても簡単には口にできなかった孤独感。それは、特定の誰かに聞いてほしいのではなく、ただ心の中にある叫び声がどうせ響く場所など存在しないと思っていたからかもしれない。こうした感情が積み重なれば積み重なるほど、心の中の空虚な部分が少しずつ大きくなる。

結局、その夜も静かに食事を終え、リビングの一角で一杯飲みながらテレビを眺めるしかなかった。誰かと一緒にいるはずが、孤独の中にいる自分を痛感しながら、そんな現状にただただ悲しむしかできなかった。俺にはこの孤独から逃れる手だては分からず、ただ受け入れることしかできないという、無力感に包まれる毎日だ。そんな状況を作り出したのは、自分自身の責任なのか、それとも避けられない家庭の変化なのか——その答えも見出せないまま。[/member]

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