【投稿者:若葉(仮名)/50代・男性・大分県】
あの日、俺の家族は壊れた。俺の心には誰にも言えない重たい秘密があって、その重さに耐えきれず、ついに先日、すべてが明らかになった。家族はみんな信じてくれていると思っていたからこそ、目の前で崩れ去っていく光景は耐え難いものだった。
長男として俺には家族を支える責任があった。父は病気で体が弱く、母はパートで家計を支えていた。それでも笑顔の絶えない家庭だった。知らなかった人もいるかもしれないが、俺の胸の
[member]内では、ずっと葛藤が続いていた。俺の中には隠していたもう一人の家族がいたからだ。
父が倒れたとき、俺は小学校の高学年だった。お金はいつも足りなかったが、それでも何とかなると思っていた。けれど、事態は甘くなかった。父が思うように働けなくなり、収入は半減。それでも、俺たち兄妹は学校を辞めることなく何とかやっていくことができた。それは、誰かが我慢して犠牲になっていたからだ。俺の中では、それは当然、俺自身の役割だと思っていた。
高校に進学するころ、俺はもう一つの事実を知ることになった。俺には別の家族——父が若いころに作った家庭があること。そして、そこにも弟がいるということ。俺の父親は、責めるにはあまりにも脆く苦しんでいる。それならばと、俺は心にこれを収め、ともに日々を支え合おうと決心した。“家族”という言葉に縛られ、俺自身が傍観者になったような気がした。それでも誰かがこの負債を背負わなければならない、そう思った。
秘密を抱え込んで生きるのは辛かった。家の壁を超えて、どうすることもできない孤独感に襲われる毎日。口には出せない父への憤り、それでも背を向けず父を信じ続ける意志。それらが激しく交錯し、俺自身が自分の感情を整理しきれなかった。それが、いつしか熟成し、やがて臨界点に達した。
ある日、俺はいろいろな感情を抑えきれず、母にすべてを打ち明けたんだ。これは俺たちだけが知るべき事実ではない、みんなで共に乗り越えるべきものだという決意を固めたからだ。だが、母の顔に浮かんだショックと失望、父をただひたすら問う姿に、俺は動けなくなった。母は泣き崩れ、何もない部屋に立ち尽くす父。弟や妹たちの困惑した目。静まり返ったその場で、俺の心に重くのしかかった罪悪感が拡がった。
この告白が結果として家族をさらに引き裂いたことを知ったとき、俺は自分の行動が正しかったかどうかさえ分からなくなった。義理と情、その境があまりにも曖昧で、どちらを優先するべきだったのか。考えても考えても、答えは出ない。
家族の絆を信じ、再出発を目指したいと思う気持ちと、それを阻む現実との板挟みに陥った俺の心は、次第に冷たく固まっていった。今、俺はただ、どこに向かっていけばよいかもわからない状態のまま、過去の責任感と罪悪感に囚われている。また昔のあの笑顔を取り戻す日が来ると願いながらも、俺の明日には確固たる約束もないまま、ただ時に流されるだけの日々が続く。
家族の中で、俺ひとりが進むべき道を見失い続けているのかもしれない。しかし、俺にはもうこれ以上、何をどうしたらいいのか分からない。今日もまた、俺の心の重しを引きずりながら、どうしようもない現状を嘆くだけだ。[/member]