【投稿者:アキラ(仮名)/30代・男性・愛知県】
私の家族が借金の泥沼に陥ったのは、ある秋のことだった。その頃、私たちはどこにでもいる普通の家族だった。住宅ローンを抱えながらも、妻と共働きでなんとかやってきた。しかし、数年前に父親が倒れてからというもの、状況は一変した。父は長年自営の工場を経営していたが、倒れてしまったことで、工場は徐々に傾き始めた。私と母は必死で手を打とうとしたが、知識も資金も乏しかった。経済的にあまりに追い込まれ、私は安易に借
[member]金に手を出してしまった。
最初は大した額ではなかったが、少しずつ借金が雪だるま式に膨らんでいき、いつしか返済額が私の手取りを超えるようになっていた。昼夜働いても追いつかず、まるで息の詰まるトンネルの中をさまよっているようだった。妻には真実を隠していたが、彼女も次第にその重圧を感じ始めていることは明らかだった。肩を落とし疲れきった表情で、何も聞かずに寄り添ってくれる妻を見るたびに、胸が張り裂けそうになった。
月末になるたびに襲ってくる返済の催促は、まさに恐怖そのものだった。電話が鳴るたびに心臓が跳ね上がり、郵便受けに請求書が投げ込まれる音にさえおびえた。私ひとりが背負っている借金でも、家族全体の生活をじわじわと蝕んでいく様子が、見て取れていた。父親として、夫として、何もできない自分を責めた。心の中で「ごめんなさい、ごめんなさい」と何度叫んでも、現実は何一つ変わらなかった。
気づけば家族の会話も減り、食卓は静寂に包まれるようになった。子どもたちには何と言えばいいのか分からず、無邪気に遊ぶ彼らを見て、どこかで「この状況を知ったら、彼らはどう思うだろうか」と考えてしまう自分がいた。あれほどまでに努力してきた父を見捨て、自分の家庭すらも守れない情けなさが、日々私の心を押しつぶしていった。
最終的には、妻にすべてを打ち明けた。涙ながらに謝罪し、私の選択が誤りだと認めた。彼女は驚きとショックで呆然とした表情を浮かべ、しばらく何も言わずに沈黙が続いた。そしてぽつりと、「これからどうするの?」と聞かれた。その質問に対する答えは、正直に言うと未だに見つかっていない。私たちは手を取り合い、この困難に立ち向かうしかないと分かっていながら、どこかで絶望感が拭えないままでいる。
再生の兆しは、今のところまったく見えていない。毎日生きているだけで精一杯で、不安と罪悪感が消えることはない。絶望に暮れる夜が明けることを願い、ただ心の中で「大切な家族を守りたい」と祈るばかりだ。しかし現実は非情にも、希望の光を差し込ませる隙さえ与えてはくれない状況が続く。こんな暗闇の中でも諦めずに進み続けるためには、一体何が必要なんだろうか。答えを見つけられないまま、今日もまた新たな一日が始まる。
家族のためにできることが他にあったのではないか、そう考える暇もなく追い立てられる日々。そんな繰り返しから逃げたくても、どこへ行くあてもない今の私には、せめて誰かとこの気持ちを共有し同情してもらうことで、少しでもこの悲しみの重さを軽減できればと思
っている。だが、それさえ心の奥底で許されないような気がして、今日もまた、一人で抱え込んでしまう。[/member]