【投稿者:陽輝(はるき)(仮名)/20代・男性・福井県】
人生の中で、あの日ほど悲しくて残酷な日はない。あれは10年前、大学時代のこと。親友だと思っていたAに裏切られた日のことだ。
Aとは大学のサークルで出会った。彼とはすぐに打ち解け、どこに行くにも一緒だった。何でも話せるし、何をしても楽しい。まるで兄弟のような関係だった。でも、その笑顔の裏には、僕が気づかない何かが潜んでいたんだ。
その日は普通の一日だった。僕たちはいつものように講義を受け、バイト
[member]に向かって解散した。その夜、サークルの飲み会があって、久しぶりの再会を喜んでいた。みんなで楽しく飲んで笑って、心からの笑顔が溢れていた。
ところが、飲み会も中盤に差し掛かった頃、Aがトイレに立った隙に、僕のところに彼のスマホが残されていた。軽い気持ちで手に取った僕は、そこで驚愕の真実を目にした。彼のメール画面には僕の彼女、Yとのやり取りが並んでいた。内容は信じられないものだった。二人は約半年も前から関係を持っていたようで、その内容はとても親密だった。
頭が真っ白になった。何かの間違いだと思いたかった。でも、画面に映る文字は、そんな僕の気持ちをあざ笑うかのように冷たく煌めいていた。
気づけば僕はその場を飛び出していた。追いかけてくる友人たちの声が後ろから聞こえたが、立ち止まることはできずに、ただただ走り続けた。なぜ、どうしてと問う心の中で、次第に怒りと悲しみが押し寄せてきた。
夜風が僕の頬を切るように冷たい。裏切られたという現実が、何度も何度も頭の中で反芻される。親友が笑顔で接してくれたすべての瞬間が嘘に思えた。こんなにも簡単に人は欺かれてしまうものなのか、そう思うと居ても立ってもいられなかった。
数日が過ぎ、どうにか自分を落ち着かせようとしたが、心の穴は埋まらなかった。Aに問いたい気持ちはあったが、彼に会う勇気もなかったし、Yのことも考えると追い詰められるばかりだった。彼らがどれほど自分を嘲笑っていたのか考えるたび、悔しさで夜も眠れない。
彼らがどれほどの時間を共にしてきたのか、いくら細部を想像してみたところで答えは見つからない。でも、その想像に頭を支配され、心は擦り切れていくばかりだった。
今でも、笑顔の裏に隠された誰かの裏切りが怖い。誰を信じていいのか、何を信じていいのか分からない恐怖がまとわりつく。それはまるで見えない鎖のように、僕を縛り続けている。誰かと出会っても、一瞬の幸福の後ろにある冷たい何かがちらつく。こんなびくびくした心では、新しい一歩が踏み出せない。
こんなに辛い思いをするくらいなら、人なんて信じなければよかったとも思う。でも、出会いや友情の大切さもまた知っているからこそ、どうしようもないこの現実にただ打ちひしがれるしかない。裏切られた僕の心は、あの日から止まったまま動けないでいる。それが何よりも苦しくて、悲しい。[/member]