【投稿者:サクラ(仮名)/30代・女性・山口県】
実は、今でも心に深く刻まれている体験があります。それは、ある意味、私にとって人生の大きな分岐点ともなった、義母との出来事です。私は、それまで家族というものに対して、温かさや安心感を自然なものとして感じていました。しかし、その出来事が全てを変えました。
初めて義母と会ったのは、結婚を控えた頃でした。彼女は一見すると、とても穏やかで親切な人でした。いつも柔らかい微笑みを浮かべ、私を温かく迎えてくれる
[member]その表情に、心からの安心感を覚えていました。結婚後、彼女は私たち夫婦の暮らしにたびたび訪れ、キッチンで一緒に料理をする時間が増えていきました。
ところが、それが彼女の本当の姿ではありませんでした。キッチンで彼女と過ごす時間が増えるごとに、微かに感じる違和感が次第に大きくなっていきました。ある日、レンジフードの下で彼女と並んで料理をしている時、彼女はふと手を止めて静かに私を見つめました。その瞳の奥には、私には理解できない何か深い感情が宿っていることに気づいたのです。
彼女は、私が彼女の息子の「奪った」女性だと思っているのか、私のちらりとも見せない不安に反応しているのか、表情に一瞬だけ刻まれたその狂気に似た輝きに、私は思わず凍りつきました。それは多分、彼女も自分では意識していない感情だったのでしょう。その一瞬に垣間見た彼女の内側に潜む感情の激流は、その後の私の心を蝕んでいきました。
その後も彼女は変わらず微笑んでいましたが、その微笑みが次第に私にとって不愉快なものに変わっていきました。些細な会話の中にも、彼女の意図を探ろうとしてしまう自分がいて、その度に自己嫌悪に陥りました。夫に相談しても、義母はあくまで善意で接しているとしか受け取られず、何も変わりませんでした。
ある夜、私たちは珍しく義母と3人で静かに食事をしていました。食卓には普段と変わらない彼女の料理が並んでいましたが、その日はどうしても食欲が湧かず、私はほとんど手をつけませんでした。すると、義母は微笑みながらこう言いました。「気に入らないのかしら?私の息子はこれが大好物なのよ。」心の中で何かが崩れる音がしました。彼女のその言葉に込められた、私への不満が、私には明確に感じ取れたのです。
結局、何も悪いことを言われたわけでもないのに、その食事の席から逃げ出しました。自室で一人、声を出して泣きました。どうしてこんな状況になったのか、自分でも答えが出ず、ただただ押し寄せる無力感に押し潰されそうになりながら。
義母との距離はその後も変わらず、私自身も彼女の前で表情を作るようになってしまいました。まるで始めから存在していたかのように、当たり前となった微笑みの裏側の静かな狂気に私は怯えているしかないのです。彼女の優しさと狂気の微妙なバランスに囚われ、何の力も持たない自分をただ嘆くばかりです。結局私には、彼女の微笑みの裏側を見る勇気もなく、逃れられないまま、ただ静かに時が過ぎるのを待っているのです。[/member]