【投稿者：あおい（仮名）／30代・女性・石川県】
オフィスの中の空気はいつもどんよりとしていて、人々の目には見えないピリピリとした緊張感が漂っていた。朝から晩までパソコンの画面に向かいながら、私はただただ涼しい仮面を被って過ごしていた。
私が入社した頃は若かったこともあり、あの職場がどれほど厳しいものかなんて考えもしなかった。皆同じように笑顔を浮かべ、仲の良さそうに振る舞っていた。その笑顔の裏に秘められた悲劇が、まさかこれほど深刻だとは、当時の
[member]私には想像もできなかった。
毎朝の会議では、直属の上司からどれだけ細かく言われの無い注意を受けないようにするか、それだけを考えていた。ミスをしないために、寝る時間を削るのは当たり前だったし、仕事がうまくいかなかったときの心の重さを思えば、むしろそれで安堵していた自分がいた。
昼休みを迎えるたび、早く一日が終わることだけを望んでいたが、時間はどうしてこんなにもゆっくりとしか進まないのかと苛立つことも多かった。昼休みさえも簡単には楽しめない。周囲との会話も弾まず、行間に感じる遠慮や沈黙が嫌で、一人で外に出てお昼を過ごすことさえあった。
他にも、プロジェクトの締め切りが近づくたびに顔色の悪さが一層増し、誰が一番早く先に帰れるかの競争では無く、誰が一番長く残業できるかを無言で競っているような有様。その中で私は、なんとか自分を強く持とうと必死だったけれど、物音がするたびに肩を震わせるようになっていた。
さらに、このオフィスの中で感じ続けた孤独感と無力感。周囲にはたくさんの同僚が物のように並んで働いていたが、誰一人として心を通わせることはできなかった。辛い気持ちを共有しようにも、みんな同じように重荷を背負っているから、誰一人としてその共感を口に出すことも無かった。
何度か心が折れそうになるたびに、このまま続けていて何が残るのかと自問自答することも日常化していた。周りの仕事ができる同僚たちを見るたびに、自分は未熟で足りていないと感じ、焦燥感に駆られる毎日。そんな折、上司からは容赦の無い指摘を浴びせられ、何も言えない自分にただひたすら嫌気が差していた。
いつしか、家に帰っても心は重いままで、夜もよく眠れなくなっていた。笑って仕事をしている自分がこんなにも無理をしているとは体がどこか悲鳴を上げるまで気づけなかった。不安と恐怖で満たされた日々が、どれほど怯えたものであったかを理解するのに、私は自分を壊れるまで追い込んでしまっていた。
結局、何も変わらず、私は毎日をただ生き延びているだけ。多分もう一度あのオフィスに戻れる日は来ないけれど、その方が幸せだと思う。笑顔の裏に隠された悲劇に笑うこともなく、お互いを疎遠にし続けるオフィスの中で、私の心と命の一部は誰にも消すことができない傷を負ってしまったのだから。
この経験を通じて得られたものといえば、ただただ過去を悔やむことだけ。今も昔も変わらず、私は心の奥で叫び続け、ただ日々をやり過ごすことしかできない悲しい現状を生きる。ただ、あの笑顔の裏に潜む悲劇をいつまでも忘れることはできないのでしょうね。私にとって、それがどれほど惨めなことか、誰よりも知っているのは私自身でした。[/member]
