偽りの団らん:食卓に潜む秘密の裏側

【投稿者:カケル(仮名)/30代・女性・島根県】

私は幼い頃から、大きな家族に囲まれて育ってきました。私の家では、毎晩のように全員で食卓を囲むのが習慣でした。笑い声や、時には怒号が飛び交う食卓。それが普通だと思っていたのです。けれども、今振り返ると、その時の私たちは皆、何かしらの偽りを抱えていたのかもしれません。

高校生になった頃、私の家族は少しずつその形を変えていきました。母はいつも笑顔を絶やさない人で、父も忙しいながらも家庭を顧みてくれてい
[member]ると思っていました。しかし、ある日、些細なことで父と母が口論になりました。それは、普段見慣れた光景の中の一部に過ぎないと思っていましたが、それが私の家に潜む大きな秘密の表れだったのです。

ある日の夜、いつものように家族で食卓を囲んでいました。母は少し疲れている様子で、父は無言のまま食事をしていました。弟はそんな両親を見て気まずそうにしていたと思います。私も何も気づかぬふりをして、その場を過ごしました。

数日後、母と二人きりになる機会がありました。私は何気なく、「最近、家の中が少しおかしいね」と口にしました。すると母は一瞬驚いたように私を見て、そして静かに泣き始めました。私にはその理由がわかりませんでした。やっと小さな声で母が語り始めたことは、父が何年も前から別の女性と関係を持っていたということでした。そうだったのか、あの食卓にはそんな秘密が潜んでいたのかと、目の前が真っ暗になりました。

その時の私の心の中は、叫んでいました。どうして私たちの家族が、私の大好きな家庭が、こんな形で壊れてしまうのかと。好きだったはずの食卓の記憶が、急速に色を失っていくようでした。そして、一番許せなかったのは、そんな状況を知りながらも、何もできなかった自分自身でした。家族を変えることも、救うこともできない無力感でいっぱいになっていました。

それからというもの、食卓の光景は変わりました。父は家に帰らないことが多くなり、母はそのたびに悲しそうな顔で過ごしていました。弟も私も、何かを言う勇気はなく、ただその場をやり過ごすことに終始しました。あんなに賑やかだったはずの私たちの食卓は、まるで仮面の下にある無言の劇場のように感じました。

家族の誰もが本当の気持ちを語ることはなく、そんな時間が続きました。私の心の叫びは届くことなく、ただ一人で泣くことすらできなくなってしまいました。偽りの団らんに潜む秘密の裏側。私はいつまでこの嘘の中に生きていくのだろうかと、ただただ悲しむばかりです。結局、誰も救われることなく、私たちの家庭は偽りの絆で繋がれたまま崩壊し続けました。今もなお、その食卓が置かれた部屋は、私の中で最も悲しい場所として存在しています。[/member]

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次