「奪われた心と時間:仕事が迫る生活の限界点」

【投稿者:りん(仮名)/30代・男性・高知県】

仕事が僕の全てを奪っていくなんて、あのころの僕には想像もしなかった。大学を卒業してから大手企業に入社し、勢いに乗っていた。給料は言うことなし、周囲からの期待も背中を押してくれた。だけど、そのころの僕は一つ、大切なことを見落としていた。それは、自分自身の心と時間が、静かに仕事に吸い上げられていくということだった。

朝から晩まで、膨大な業務に追われ、時間に追われていた。スマホには仕事のメッセージが絶
[member]えず鳴り響き、休む間も与えてはくれなかった。デスクに座れば、わんさかと積まれた書類の山。隣にいる同僚と顔を合わせることさえ希で、ただただパソコンの画面とにらめっこする日々だった。そのとき、僕の中の何かが静かに叫び続けていた。

「おい、このままでいいのか? お前の人生はこれでいいのか?」

この内なる声が聞こえるたび、僕はそれを振り払おうと奮闘した。しかし、いくら仕事をしても終わらない。退社するころにはもう23時を回り、疲れに精魂を奪われた僕は、家に帰るや否やベッドに倒れ込んでしまう。週末も、体は仕事の疲れをいやすために動かせず、気付けば寝てばかり。友達と会うことも億劫になり、人間関係は次第に薄れていった。

気が付けば、僕はひどい孤独に包まれていた。誰も探してくれるわけではない。裸になった心は、冷たい空気をそのまま感じ、凍るような痛みが心を締め付けた。こんな日々が続くと、物事に対する興味も感情も失っていく。かつて夢中になっていた趣味も、今はもう無意味に思えた。

ある晩、疲れ果てて帰路に就いたとき、違和感を覚えた。自分が何をしているのか、本当にわからなくなってきたのだ。「おれは誰だ?」「何をしたいんだ?」心の中の叫びがますます強くなり、ついには頭を締め付けるようになった。終わらない仕事の山、終わらない家と職場の往復。まるで出口のない迷路に迷い込んだような気持ちだった。

自分を取り戻したいと思いながら、結局できることといえば、目の前の仕事をこなすことだけ。悩みやストレスを抱えたまま、何も変わらない毎日が不安と絶望を加速させた。そして、次第に体にも影響が出始めた。睡眠不足が続き、食欲もなくなり、度々体調を崩すようになった。なのに、それでも仕事からは逃れられない。上司からのプレッシャーも相まって、心は悲鳴を上げ続けた。

今でもその日々は続いている。目の前には大量の書類、画面にはどんどん増えていく未返信のメール。そして変わらずに聞こえる心の叫び。それでも、どうしようもない。この先の未来は、一体どうなってしまうのか、正直わからない。ただ、僕の思い描いていた「働く」という形はきっと、こんなものではなかったはずだ。

「誰か、どうにかしてくれないか」、そう願ったところで、この状況は変わらない。きっと、それは自分自身で変えない限り、誰も助けてはくれないのだ。それなのに、日々の慌ただしさに埋もれて、自分を変えるための一歩すら、踏み出せずにいる。悲しいかな、これが今の僕の全てだ。[/member]

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