「鏡に映る嘘つきな私:自己欺瞞の底なし沼を抜け出せるのか」

【投稿者:あきはる(仮名)/30代・男性・北海道】

高校を卒業して数年後のことだった。あの頃の自分は、誰もが羨むような順調な人生を送っていると思われていた。それは、名門大学への進学が決まり、大手企業からの内定を受け、さらには優しい彼女までいるという「完璧」な状態だったからだ。しかし、それはあくまで「仮面」の話。心の奥底では常に違和感を感じていた。「こんなに順調でいいのか?」「本当にこれが自分の望む未来なのか?」と。そんな疑問を抱えつつ、周囲に合わせ
[member]て微笑み続けていた。

ある日、いつも通り仕事を終えて帰宅した時のことだった。玄関を開けるや否や、とてつもない孤独感と不安に襲われた。誰もいない部屋の暗がりが、その感情をより一層募らせるようだった。いつしか涙が止まらなくなっていたが、自分でも何に対して泣いているのか分からなかった。ただただ「自分が自分でない」そんな気持ちが襲ってきた。誰かにこの気持ちを打ち明けたいと切実に思ったが、周囲に心配をかけたくないという気持ちと、どう説明すればいいか分からないもどかしさで、結局誰にも話さずに自分だけで抱え込むことになった。

その後も日常生活を続けたが、心の中の葛藤は日に日に大きくなっていった。表向きは笑顔で接していても、心の中では「本当にこれが俺の望むものなのか?」という疑念が常に張り付いていた。そして次第に、その疑念は自己嫌悪へと変わっていった。自分を信じることができないことへの苛立ち、それを隠し続けていることへの嫌悪感が、自分自身を蝕んでいった。

ある夜、無理やり笑顔を作り続ける自分に耐えきれなくなり、ついに彼女にすべてを打ち明けることにした。初めは彼女も驚いていたけれど、次第にわかると言ってくれて、親身になって話を聞いてくれた。しかし、どうしてもその優しさが心に響かなかった。それどころか、自分にはその優しさを受け取る価値がないのではないかと感じるようになり、彼女に対しても次第に身構えてしまうようになった。

彼女にすがることもできず、結局また一人で抱え込むことになった。ただただひたすらに自分を責め続け、沼のような自己欺瞞の世界にはまっていく。仕事でもミスが増え、人間関係もぎくしゃくし始め、一番大切にしたかった彼女との関係も、もはや修復不可能なほどに悪化してしまった。

そんなある日のこと、とうとう彼女から別れを告げられた。その瞬間、すべてが崩れ落ちる音が聞こえた気がした。まるで薄氷の上を歩いていたような感覚で、正体不明の「成功」の上に築き上げたはずの自分の人生が、ガラガラと崩れていく様をただ呆然と見ているしかなかった。

その日以来、自分の心には深い絶望の陰がしみついてしまった。「いつかはきっと」という希望はなく、ただただこの深い闇の中に沈んでいくしかないのだと諦めるようになってしまった。鏡に映るのは、かつて夢見た自分の姿ではなく、嘘と欺瞞でできた仮面をかぶったもう一人の自分だった。

自分が自分でいることがこんなにも苦しいとは思わなかった。そして、この底なし沼から抜け出せる日は来るのだろうか、という疑問が頭から離れない。助手席に座って未来を望んでいたはずの人生は、操縦不能となり、ただ無為に暗闇に突き進んでいるようにしか思えなかった。[/member]

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