【投稿者:はいどうぞ: かぜ。(仮名)/20代・男性・宮城県】
過去を振り返ると、僕の家庭は一見普通に見える家族だった。親父は会社員で、母は専業主婦。外から見れば、何の問題もない家庭に見えたかもしれない。しかし、その見えない檻の中で育った僕には、心に深い穴が空いている。
幼い頃、僕はいつも親の顔色を伺っていた。特に母親の期待に応えようと努力した。母は「いい子」でいることを強く求めた。テストでいい点を取ること、家の手伝いをすること、そして、決して目に見える形で
[member]反抗しないこと。この「いい子」でいることが、愛される条件だと信じ込んでいた。結果として、自分の本当の気持ちを押し殺し、ただ大人の顔色を見て生きるようになってしまった。
一方で、親父は厳格だった。褒められた記憶はほとんどなく、むしろ失敗に対する説教ばかりだった。何度も何度も、「お前はまだまだだ」と、努力が足りないことを指摘されてきた。僕は親父の前では語ることを恐れた。思ったことを言うと、必ず否定されたからだ。こうして、自分の意見を言うことが怖くなり、自信を失っていった。
学校生活でも友達はいたが、心を開ける相手はいなかった。親との関係が影響し、常に他人にどう見られているかを気にしていた。他人から拒否されることを恐れ、本当の自分を隠すようにして過ごしていた。
大学に進学した頃、自分の中で何かが崩れ始めた。周りの友達が楽しそうに将来の夢を語る中で、自分には何も見えていないことに気がついたのだ。親に期待される「いい子」であることに焦点を合わせ続けた結果、自分が本当に何をしたいのかがわからなくなっていた。大学生活の中で試みたどんな活動も、自分にとっては興味のないものばかりで、どれもしっくりこなかった。
そんな状態が続いて、自分は無力だと感じるようになった。心にぽっかりと空いた穴をどうすることもできなかった。そしてある日、自分の中のすべてが崩壊するような感覚が訪れた。自分は誰にも必要とされていないんじゃないか、本当の自分なんて誰も知らないんじゃないかという考えが頭から離れなくなった。
この心の叫びを誰かに伝えようとしても、言葉にならない。誰にも理解されず、聞かれてもどう答えていいかわからず、苦しんでいた。日々の生活の中で、笑顔を作ることすら難しくなり、親や友人たちの間でどんどん疎外されているような気分になった。
特に辛かったのは、親に何も言えなかったことだ。母親に「どうして最近元気がないの?」と聞かれても、「なんでもない」としか答えられなかった。自分を守るための鎧が、逆に自分を追い詰めていく。言葉にならない想いだけが心を締め付けた。
今でもその檻から抜け出すことはできず、逃れようとしてもがいている。心に開いた穴は埋まることなく、親に対する感情も複雑なまま。親を憎む気持ちもあるが、それと同時に愛されたいという未練も捨てきれない。結局、その2つの感情に引き裂かれ、どちらにも決着がつかないまま過ごしている。
この状態が続くことがとても怖い。けれど、どうすればいいのかわからず、ただただ現状を嘆くしかない。この檻から抜け出せる日は来るのだろうか、そう思いながら、自分の人生を歩んでいる。心の叫びは、まだ聞かれることなく、ただ空虚に響くだけだ。[/member]