「隣人の秘密を暴いた日:知らなくて良かった裏の顔」

【投稿者:ひかる(仮名)/40代・女性・広島県】

私はずっと閑静な住宅街に住んでいて、周りとは程よい距離感を保ちながら、穏やかに暮らしていました。休日になれば、近くの公園に足を運び、自然に触れたり、ちょっとした挨拶を交わしたりする程度の生活。それでも、それが心地いい自分にとっての「平和」でした。

しかし、その「平和」が壊れる瞬間が来るとは思いませんでした。私の家の隣に引っ越してきたのは、中年のご夫婦。最初の印象は、仲の良さそうな普通の夫婦でした
[member]。時折、庭を手入れする彼らの姿を見かけては、こちらも和やかな気持ちになったものです。しばらくは特に変わったこともなく、挨拶程度の付き合いが続いていました。

ところがある日、何気なく窓の外を見ていると、隣人の家の中からひどい怒号が聞こえてきました。思わず耳を疑いました。あまりの迫力に、好奇心から思わずカーテンの隙間から様子を伺ってしまった。そのとき見たのは、想像を絶する光景でした。書くのもためらわれますが、隣の夫婦が激しく争っていたのです。

驚きでした。こんな静かな住宅街で、まさかそんなことが起きているとは、夢にも思いませんでした。その場で止めに入れれば良かったかもしれません。でも恐怖と驚きで身体が動かず、ただ息を潜めて成り行きを見守ることしかできなかった。

その後も、そのような光景は続きました。日に日に激しさを増す彼らの争いに、心の安寧がどんどん奪われていきました。毎晩、隣から響く怒声は耳に焼きつき、眠れぬ夜が続きました。ただの目撃者である自分には何もできませんでした。恐怖心が先立ち、その家の扉を叩くことすらできませんでした。

日常が壊れていく感覚から逃れるよう、外に出る回数を減らし、出来る限り家にこもる生活を始めました。しかし、そのような生活にも限界があります。外に出る度に、まるで事情を知っているかのような近隣住民の視線が付きまとい、居心地の悪さは増すばかりでした。

そして、あの悲劇が起きました。ある日、響く怒号が途絶えた後、警察が訪れ、数時間後、救急車のサイレンが響き渡りました。あの時まで保存していたわずかな希望も消えてしまいました。何があったのかは知る由もないけれど、良くないことは明白でした。

心にぽっかりと穴が開いたようで、ただただ虚無感にさいなまれました。助けを求める彼らの声を、見て見ぬふりをして耳を塞いでしまった自分を許すことができません。もしかしたら、何か声を掛けるだけでも状況は変えられたのかもしれないのに。

誰にも相談できない怖さ、自責の念に押し潰されそうな日々。私はただ近所の友人と近況を交わし、何事もなかったようにお互い笑顔をつくる日常に戻ることしかできません。毎晩、聞こえてくるはずの怒号が鳴り止んだ静かな夜。これからもこの平和は続くだろうけれど、私の心には終わらない悲しみが残ったままです。

「助けられたかもしれないのに、なぜ何もできなかったのだろう。」意を決してこの声を届けられなかったことが、私の心を一生責め続けるでしょう。お隣の静まり返った家を見つめながら、心の中で何度も叫ぶのです。[/member]

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